ネット黎明期に危うく詐欺の被害に遭うところでした

ネット被害

この記事は東京都在住の方よりご執筆いただきました。

Windows95が世間に普及し、インターネットのサービスに幅が広がり始めていた2001年。当時のショッピングといえば楽天市場やYAHOO!ショッピングに加え、ツールを使用して制作された小売店のウェブページやヤフーオークションと、消費者が選択できるサービスは多くはありませんでした。そんな時代に私は、ファッション雑誌でモデルが身に付けていたスニーカーに一目ぼれしてしまったのです。雑誌ですので商品情報からブランドと販売店を割り出すことに成功、次の週末に直営店に行くことにしました。

そのスニーカー非売品につき

非売品のスニーカー

宮崎に住んでいた私の地元にその直営店がなかった為、県を超えて鹿児島市にある直営店へ直行。そこで店頭にあることを信じ隈なく探しましたが見つけられず、別の商品に気を取られながら店を出ようとしていた時です。なんと、店内中央にあるガラスケースの中に目的のスニーカーが飾られていました。見る所、商品に値札は付いていません。私はすぐに店員を呼んで「この商品いくらですか?」と確認しました。すると店員は「10万円ぐらいかな」と答え続けて「実は非売品で展示用に全国を周回しているんです」と言うじゃありませんか。私は強引にその値段でいいから売って欲しいと希望しましたが、店員はバックヤードから帰ってくると「販売は出来ないそうです」と言い残し、私は目の前にあるスニーカーを手に入れることは出来ませんでした。

なんとしても手に入れたい強い意思

インターネット上のサイト

諦めがつかなかった私は絶対に手に入れてやると決意し、インターネットで探すことにしました。大手のショッピングモールを覗きヤフーオークションに張り付く日々が続き、見つからなかったので戦略を変更。普通であればこの時点で諦めるのでしょうが、ツイッターやインスタグラムなどの個人対個人のコミュニケーションツールが無い時代、当時定番だったBBS(電子掲示板)に望みを繋ぎます。スニーカーのコミュニティを見つけては「このスニーカーを探しています、10万円で買います」と。手あたり次第10個程度のBBSに書き続けたでしょうか。そしてついに私の書き込みに返信が届きます。「非売品ですので15万と送料着払いでいかがですか?」。舞い上がった私はお互いのメールアドレスをすぐに交換。その後、直メールにて代金振込先と発送先のやり取りをし、その日のうちに振込手続きまで完了させました。

警察署で被害届を提出

警察

商品代金振り込みから一週間が経ち、二週間が経ち、そしてメールの返信も途絶えました。”やばい・らやれたかも”と気付いてはいましたが落ち着いてよくよく考えてみると、そのスニーカーは世界100足限定で一般人の手元には元々こない商品なのかもと普通に思うようになりました。憧れのスニーカーでしたが恐らく届かないと分かった以上、お金を取り戻すしかありません。そこでまずは地元の警察署に出向きことのいきさつを相談。正式に捜査をしてもらう為に被害届も提出・受理されました。出来るだけ多くの情報提供をと思い、BBSのやり取りや直メールの内容をCD-ROMに焼き提出しましたが、ウイルスの関係で受け取り拒否。あとは捜査に進展があったらお知らせしますということでした。

詐欺であると断定されず民事不介入へ

口座

後日、警察から連絡が入り私は再び警察署へ。状況としては、このかたは他のかたとも正常な取引の実績があること、また銀行口座の振込金額に移動がないことから詐欺の可能性は低いと告げられました。そしてこの段階では警察としても事件性が低い以上、動きようがないということでそのかたの実家の電話番号を開示するということになりました。つまりはある意味の民事不介入といったところです。

直接実家に電話をして確認した結果...

電話

当事者が出るかは分かりませんでしたが、進展を期待してとりあえず開示された実家の電話番号に掛けました。一回目で電話が繋がり出たのはそのかたの母親でした。そこで警察のことも含めてことのいきさつを説明したところ、少し慌てた様子で息子から折り返しますという返答でした。母親との電話後30分ぐらいでしょうか、私とスニーカーの取引をした当事者から電話が掛かってきました。私は今回のことを重大な事件として取り組んできましたが、意外にも相手方はあっさりしたものです。「すみません、BBSで取引したことを忘れていました、これ以上両親を心配させたくないのでお金は全額銀行振込にて返金します。」というものです。それはそうと、相手が現物を持っているのか気になったのでそのことを質問すると「海外から並行輸入で入る予定でしたが、無理でした。」とこれまたあっさり。つまり商品は手元になく取引開始をしたということで少し頭にもきましたが、私が支払った現金は当日すぐに振り込みがありましたので、解決した安堵の気持ちの方が大きかったのを覚えています。

インターネット黎明期は危険なとても時代でした。

危険な時代

自力ではありましたが、解決という判断をしましたので再度、警察署に出向き被害届の取り下げと情報開示のお礼をして問題決着としました。その後、ミクシィやフェイスブック、ツイッター、インスタグラムと様々な個人のやり取りが可能なものが登場しましたが、インターネット黎明期を今思うと恐ろしいことばかりです。BBSでもオークションでも直メールでやり取りし、自分の住所や電話番号から銀行口座情報まで開示して、今では身の危険も感じるなと思わされます。その事件以来BBSでの取引は一切しなくなりましたが、以降個人間取引のプラットフォームも選択肢が増え、手続きと匿名配送などのセキュリティも強化、ひとまず安全な時代になったなと感じています。それでもなんとか秩序を乱さなかった2000年前期のアナログ時代ですが、やっぱりインターネット黎明期は危険な時代という感覚が私には強く残っています。